第39回 活動報告

あおぞらの輪
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【活動報告】第39回 あおぞらの輪
 ドラえもんの道具の中に,確か「もしもボックス」という道具があった.電話ボックス型の道具であり,受話器 に向かって「もしも‥だったら?」と言葉を伝えると,電話ボックスの外の世界がまるまる変化してしま
 う最強の秘密道具である.(作中では,「もしも昼と夜がなくなったら‥」「もしもお金のない世界だったら‥」「もしも眠れば眠るほど偉くなったら‥」「もしもスネ夫の家が貧乏だったら‥」「もしも魔法が使える世界だったら‥」などなど40程度の興味深いテーマが扱われている.)
 奇しくも,今回参加者の皆さんが紹介してくれた本には,そんな「もしも‥なだったら?」が溢れていたような気がする.八木山の市民センターの小さな和室で,確かに私たちは,「もしもな世界」を参加者同士で問いかけ,それぞれの頭の中で想像(創造)していた.
📚紹介された本
 (1)松村圭一郎「くらしのアナキズム」(ミシマ社) 
 (2)カル・フリン,木高恵子(訳)「人間がいなくなった後の自然」(草思社)
 (3)テッド・チャン,浅倉久志・他訳「あなたの人生の物語」(早川書房)
 (4)ローマン&パトリック・ホッケ編著 丘沢静矢・荻原耕平訳「『はてしない物語』事典」(岩波書店)
 
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❓生まれた「もしも‥?」
 (1)もしも,「国家」がなくなったら‥?
 もしも,「国家」が機能しなくなったら(あるいは「国家」を頼ることができない場面になったら),私たちは生きていくことができるのだろうか?私たちが「当たり前」に享受しているようなインフラや法制度,あるいは公共施設が,ある日突然パッタリとなくなったら.特に,人と人同士の繋がり(コミュニティ)はどうなるのだろうか?
●アナキズム(無政府主義):AIによる概要より
 国家や権威を否定し,個人の自由と自立を重視する思想です.支配や強制のない社会を理想とし,自発的な協力や相互扶助による社会の構築を目指します.
 発表の中で印象的だったのは,「なければないで,自主的に生活を回す」という表現.自分達で繋がりを作り,生活に必要なものは何かを考え,役割を決め,自治的な運営を始めるのではないか.もしかしたら,日頃からのお茶っこのみや井戸端会議から,小さく大切な何かが始まるのかもしれない.
 時には,意見や主張の強い人が現れ,「権威」の不均衡が起こるために,「繋がり」を築くことの煩わしさを感じてしまう人もいるのだろう.そこで,「市場」という「人と人のつながりの匿名化がされている」コミュニティの在り方が参考になる.お互いの出自を知らずとも,誰かと誰かが緩やかにつながっている.様々な人が対等のコミュニティであり,地縁や血縁,社縁とも異なる関係=無縁の市場に生まれる有縁のつながりである.
 ↑の「もしも‥」を投げかけられたことにより,「理想的なコミュニティの在り方」を考えることにもつながるなぁ,と頭が冴える思いがした.
 
 (2)もしも,地球から「人間」がいなくなったら‥?
 地球が誕生してから「人間」のいない世界は確かに存在していた.(遅かれ早かれその時は来るのかもしれないが)もし人類が絶滅し「人間」が地球上からいなくなったとしたら‥.
 果たして「自然」はどのようになっていくのだろうか?
 紹介された本は,地球から人間がいなくなった後の「自然」について研究・考察がなされた内容であった.原発や火山活動,工場排水など,現在でも環境問題・社会問題としてよく取り上げられているような原因により,人間が締め出されてしまった場所が地球上に点在している.著者はそのような場所に足を向け,そこで起こっている「自然」の有りようを記載している.
 まず,「人間」がいなくなったその「隙間」に,植物や動物はやってくる.もしかしたら,絶滅危惧種と呼ばれた植物や動物が繁殖するのかもしれない.何かがいなくなると,その「隙間」を埋めるように,何かがその場所を埋めることになる.そこでの「自然」はどのような姿なのだろうか.私たちがよく想像するすべてを優しく包み込むようなものとは限らない.生命力が溢れ,荒々しさを伴ったような,縦横無尽に這い回るような,そんな姿かもしれない.(「人間」が環境に働きかけると,「自然」は押し返す力を持つ,という話が印象的である.)
 たとえ「人間」がいなくなったとしても,「地球」は続いていく.いなくなった後の「地球」については誰も見ることはできず,想像するしかないのだが.
(3)もしも,地球外生命体が地球にやってきたら‥?
 私たちが想像する「火星人」のような人形の形をしているとは限らない。地球上では存在しないプレデターのような見た目かもしれないし,もしかしたらアメーバのような「不定形」のものかもしれない。(紹介された作品に出てくる地球外生命体の姿も,私たちに「未知との遭遇」を体感させてくれる.これは実際にご覧になってほしい.)
 これまでに出逢ったことのない,命のかたちに戸惑い,自分の想像力の乏しさを恨みながらも,目の前の彼らを観察する.彼らは人間に危害を加える存在なのか?そうでないとしたらこの地球に訪れる理由は何か?どこからやってきて,どこに向かおうとしているのか?私たち人間に何を求めているのか?…
 無数に浮かぶ疑問を頭の中に抱えながらも,彼らと意思を伝達するために,人間は「言葉」を発する。
「私は人間.あなたは?」
 彼らは発する.私たちが見たことも,聞いたこともないような「言葉」で.長い長い「理解」の旅が始まってゆく.
 
 (4)もしも,ファンタジーの世界に迷い込んだら‥?
 いつからか,私はファンタジーの世界を想像することがなくなったように思う.この空のどこかには,ラピュタみたいな浮かぶ島があるんじゃないか…?あの小さな虫たちは,どんな言葉を交わしているのだろう…?ここを掘ると,人間よりも高度で知的な生活をしているのかもしれない…このクローゼットのなかには,見たこともないような広大な世界が待ってるんじゃないか…?
 子どものころはあんなに豊かだったのに.
 私たち現代人はいつの日か,「無駄な時間」を楽しむけとができなくなってしまうように思う.私たちの生活をここまで便利にしてくれた科学や経済の進歩は,どうやら私たちの「内面世界」を痩せ細った貧しいものにしてしまっているようで.
 ↑のような想像をする時間は,「意味のない」「無駄な時間」となり,より豊かに生きるため,という名目で,私たちは「おカネを稼ぐ」ために今の時間を使っている.効率・生産・成長に急き立てられながら,私たちの有限の時間は姿をなくしていく.
 私たちの「心の豊かさ」は,そんな「無駄な時間」にこそ含まれているんじゃないか…
 それこそ,(1)から(4)のような「もしも…だったら?」を誰かと語り合うなかで,私たちが失っていったものが取り戻されるんじゃないか.
「はてしない物語事典」を紹介してくれた彼女は,そんな「おカネを稼ぐ」ための時間に疲弊しながらも,とつとつと「内面世界の豊かさ」には何が必要かを私たちに投げかけている.
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