第67回 活動報告

あおぞらの輪
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【活動報告】第67回 あおぞらの輪

 今回は,仙台駅東口側にある生涯学習支援センターの7階.創作室という駅前の賑わいを一望できるお部屋を借りることができた.市民活動が仙台を中心に徐々に活発になっている昨今,とにかくお部屋を借りることがなかなか難しい.この場所がとれたのは運がよかった.
 9月はじめの会,「読書の秋」という言葉をキーワードに,読書の輪(おすすめの本紹介)の時間をじっくり取った.印象的だったのは,お互いがお互いの作品紹介に関心を示し,紹介が終わった後も気になったことを活発に質問されていたことである.ただ紹介を聴くだけではなく,紹介者がその本に感じている「味わい」を他の参加者と一緒に改めて見出していく.「味わい」の共有と探索,読書会と呼ばれるコミュニティの醍醐味が至るところで生まれていたことが嬉しかった.1冊の本と関わって感じた「味わい」を存分に表現することはできただろうか.

 初回からご自身のペースで通い続けてくださっているOさん.紹介の場に出されたのは,内容が濃そうな歴史小説や資料たち.計6冊ほど机に出してくれていたがどれも読み切ったらしい.相変わらずの凄まじい読書量だ.
 そんなOさんは近々京都に旅行に行かれるご予定.今回ご持参された作品の多くは舞台が京都のものであった.神社仏閣やお城などの歴史的な建造物.教科書で名前を知るだけでは,なかなか興味をもつことができない.しかし,↑のような舞台が京都の物語に触れることを通して,その場所がより面白くなる.「ここは,あの人物が住んでいた場所で‥」「あそこでは,こんな事件が起こっていて‥」「あの美しい情景描写はここのことを伝えていたのか‥」.
 旅行に行く先が舞台の物語を読む.本との新鮮な関わり方に,同じグループの人たちは感動を示されていた.

 最近あおぞらの輪に足繁く通ってくれている友人Oくん(↑とは別の方)は,「今話題のやつ持って来ちゃったんだけど‥」なんて少し恥ずかし気に本の紹介を始めている.島津輝さん著の「カフェーの帰り道」(東京創元社).大正浪漫を感じさせるような,ちょっぴりお洒落な装丁の1冊を場に出してくれていた.
 舞台は大正時代のある「カフェー西行(『カフェー』当時の言い方らしい)」.個性豊かな女給たち(竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子,小説修行が上手くいかず焦るセイ,嘘つきだが面倒見のいい美登里,大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子)が働くカフェーにて紡がれるさりげない日常の物語だとか.「とにかく登場人物たちのキャラが愛おしくて‥」と嬉しそうに話すOさんの声色がとても印象的.
 大正時代であっても今の私たちと同じように様々なことに思い悩み,それでも小さな喜びを抱えながら生きている.時代が変わっても,変わらない私たちの「人間」の部分が愛おしくなる作品である.

 tbcのラジオを聞いて遊びに来て下さったOさん(↑の2人とは別の方).どのようなことでも感情豊かに聴いてくださるから,思わずこっちも夢中になってお話してしまう‥.面白がって(興味を持って)聴いて下さる方の存在がどれだけ有難いか.感謝してもしきれない.
 そんなOさんが持ってこられたのは一風変わったミステリー短編小説.友井羊さん著の「放課後レシピで謎解きを」(集英社文庫).凹凸女子高生2人(内気で人見知りの結✖️猪突猛進でトラブル多発の夏希)が織り成す青春ミステリー.それぞれ1人でいることが当たり前の2人が出会い,料理にまつわる謎に挑んでいく.
 どんなところが「一風変わった」と感じたかというと,犯人のやむを得ない事情や背景が丁寧に描かれているところである.「どうしてもそのようにせざるを得なかった」理由に触れられているが故に,事件解決後の探偵側と犯人側が分断されずに繋がりを保っていける.事件後,犯人側として分断されてしまうような冷たさを感じずに済むような物語構成.日常の中のささやかな謎を扱うミステリー.もう読みたい.出てくるお料理・お菓子たちも,とても美味しそうらしい.

 朝にコーヒーを飲みながら,通勤の電車の中で,公園で秋の風を感じながら.なんとなく手にとった本を,いつか誰かが勧めていた本を,続きをもっと読みたいと思っている本を.それぞれのライフスタイルに合わせた読書のあり方が日常の中で流れている.さらに,作品に散りばめられた言葉たちのどこに感動を覚えるかも,人によって異なる.想像もできないような驚くべき展開に,日常の中の脆くもあたたかい人情味に,自分1人では決して発見できなかった視点に,今まで出会ったことのない感情に.
 参加してくれた8人それぞれが本と向き合い,味わったことをお互いに共有することができていた.そして面白いのは,他の人の語りを通して本と触れ合うと,味わってみたい本が増えていくことだ.文章だけでは伝わらない本の魅力,その人がどのようにして1冊の本と出逢い,どのような感情を抱いて(どんな発見があって),どのように世界が変わっていったか.そのような「味わい」を人の語りを通して触れることで,さらに新鮮な本との出逢いがつくられる.本と出逢う場所は,本屋や図書館だけではない.本を味わう・味わおうとする人の存在の力を借りることで,興味の範囲は広がりを見せていく。