誰だよこの男!『点と線』読書会
6月22日(日)、第17回読書会を行いました。
今回は全員がリピーター参加!12名での開催となりました。
今回は全員がリピーター参加!12名での開催となりました。
まずは自己紹介。
おひとりずつ、リピート参加の理由とおすすめ本をご紹介いただきました。
今回から、おすすめ本の紹介は「ある場合のみ」というスタイルに変更しています。
というのも、毎月の課題本に取り組むだけでもなかなか大変ななか、毎回ちがう本を紹介するのは至難の業。
そんな中で、メンバーの方から「無理のない形にしては?」という提案をいただき、気づかされました。
無理なく、楽しく続けていくためには、ときどきこれまでのやり方を見直すことも大切ですね。
ご提案、ありがとうございました!
参加者たちのオススメ本
今回紹介されたオススメ本は、バラエティ豊かで、まさに十人十色。それぞれの「好き」がにじむラインナップでした。
絵本や日記本、コラム、エッセイ集など、日々の気づきを言葉にするような本も。紹介を聞いているだけでみなさんの本棚をのぞかせてもらったような気分に。
なかでも心に残ったのが、ナンシー関さんのコラム本を紹介された方の「ナンシーさんがもし生きていたら、今のこの社会をどう見たんだろう」というひと言。
彼女が連載していた時代には、まだインターネットが身近でなかった。SNSやネットニュースがあふれる今、ナンシー関ならどんな視点でこの時代を切り取るのか――そんな想像が、なんとも余韻を残しました。
読書のスタイルも感じ方も人それぞれ。そんなことをしみじみ思う、静かであたたかな時間でした。
なかでも心に残ったのが、ナンシー関さんのコラム本を紹介された方の「ナンシーさんがもし生きていたら、今のこの社会をどう見たんだろう」というひと言。
彼女が連載していた時代には、まだインターネットが身近でなかった。SNSやネットニュースがあふれる今、ナンシー関ならどんな視点でこの時代を切り取るのか――そんな想像が、なんとも余韻を残しました。
読書のスタイルも感じ方も人それぞれ。そんなことをしみじみ思う、静かであたたかな時間でした。
課題本は松本清張『点と線』
今回の課題本は、松本清張『点と線』でした。
最初は「昭和の古い小説でとっつきにくいかもしれない」と感じていたのですが、物語が進むにつれ一気に引き込まれ、特に“4分間のトリック”には鳥肌が立つほどの緊張感がありました。すべての構成がその瞬間に向かって積み上げられているようで、さすが名作と言われるだけのことはあると納得しました。
印象的だったのは、当時の価値観の濃さです。女の描かれ方や、年齢に対する感覚、通信や移動手段のスピード感の違いなど、「今とはこんなにも違うのか」と思わされる場面が多くありました。時代背景がそのままミステリーの仕掛けにもなっていて、今では成立しないようなトリックがリアリティを持って展開されるのは、まさにこの時代ならでは。読んでいるうちに、昭和という時代そのものを体験しているような感覚になりました。
鉄道や時刻表を駆使したアリバイトリックは、今のミステリーではあまり見かけない手法ですが、その分、新鮮で知的な楽しさがありました。ミステリーとしてだけでなく、当時の空気感ごと味わえる文学作品として、とても豊かな読書体験になったと思います。
ここからは、読書会にご参加いただいたみなさんの感想を紹介していきます。それぞれの視点からどんなことを感じたのか、ぜひお楽しみください。
印象的だったのは、当時の価値観の濃さです。女の描かれ方や、年齢に対する感覚、通信や移動手段のスピード感の違いなど、「今とはこんなにも違うのか」と思わされる場面が多くありました。時代背景がそのままミステリーの仕掛けにもなっていて、今では成立しないようなトリックがリアリティを持って展開されるのは、まさにこの時代ならでは。読んでいるうちに、昭和という時代そのものを体験しているような感覚になりました。
鉄道や時刻表を駆使したアリバイトリックは、今のミステリーではあまり見かけない手法ですが、その分、新鮮で知的な楽しさがありました。ミステリーとしてだけでなく、当時の空気感ごと味わえる文学作品として、とても豊かな読書体験になったと思います。
ここからは、読書会にご参加いただいたみなさんの感想を紹介していきます。それぞれの視点からどんなことを感じたのか、ぜひお楽しみください。
参加者の感想
参加者から、こんな感想が出ました。一部をご紹介します。
•久しぶりに読むミステリとして新鮮で、読者も一緒に真相を追う楽しさがあった。
•地名や乗った電車が登場し、旅の記憶と重なってよりリアルに感じられた。
•ドラマ『黒革の手帖』をきっかけに原作を読み、当時の交通事情や価値観がトリックや展開を可能にしていたことに驚いた。
•ストーリー冒頭の「情死」が疑問なく受け入れられているのは、当時の社会的な思い込みの強さを物語っていると感じた。
•普段は刑事ドラマを好んで観るが、本で読む推理はまた違った面白さがあった。
•通信手段や時代背景の違いに戸惑いながらも、権力による口封じという結末にリアリティを感じた。
•もっと社会派な重厚さやスケールを期待していたため、こじんまりとした終わり方に物足りなさを感じた。
•シンプルなトリックに、今の自分が読み慣れすぎて“スレて”しまっていることを実感した。
•小さな手がかりを追っていくアリバイ崩しの過程は楽しかった。
•ただ、動機の弱さや証拠の曖昧さ、伏線が回収されない点に物足りなさが残った。
•清張の初期作品ということで、社会派ミステリとしての野心は感じたが、トリックやテーマ性の薄さに物足りなさを覚えた。
•名作とされる理由や、時代背景との関係についてもっと深掘りして読めばよかったと感じた。
みんなでフリートーク
社会派ミステリーの代表作?
ひととおり感想を共有したあとは、作品全体をめぐるフリートークに。
『点と線』は「社会派ミステリーの代表作」と言われることが多いですが、実際に読んでみると、国家権力や官僚組織への強い批判が描かれているわけではなく、そこまで“社会派”という印象は持てなかった、という声がいくつかあがりました。
そこで話題にのぼったのが、日本の推理小説の歴史的な流れについて。戦後しばらくは江戸川乱歩に代表される“トリック重視”の作品が主流だった中で、松本清張が初めて「国家や組織の闇」を描きはじめたのではないかという視点が出ました。
『点と線』は清張の初期作であり、本格的に“社会派”へと舵を切る前の作品。だからこそ、後の『砂の器』のような濃厚な社会背景までは描かれていないけれど、当時としては新鮮でセンセーショナルな作品だったのではないか――そんな読み解きが印象に残る時間となりました。
心理描写の少なさ
もうひとつ、多くの参加者から共通して出たのは、「登場人物の心理描写があまりにも少ない」という声でした。とくに事件の真相や犯人の動機が、刑事の視点からの推測だけで語られていて、内面に迫るような描写がほとんどない。そのため、読後にどこか“物足りなさ”を感じたという人も。
この点については、「清張が新聞記者出身だから、どうしても“事実を並べる”ような描き方になるのでは」という意見も出ました。実際、ラストで刑事の手紙によって真相が明かされるという展開は、それまでの緻密なトリック描写との落差もあり、やや唐突であっけなく感じられた、という声も。
表紙の男、誰!?
さらに盛り上がったのが、本の表紙に描かれている男性の正体についての話題。「あれ、誰なの?」と疑問の声があがり、議論のすえ「安田では?」という意見で一旦は落ち着いたものの、「実は“4分間の空白”を見つめる松本清張本人では?」という説が出た瞬間、「それだ!」と一同納得。作品をめぐる想像がふくらむ、読書会らしい楽しいひとときでした。
ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!
来月は『黒い雨』!
さて、次回7月27日(日)読書会では、井伏鱒二『黒い雨』を課題本に開催予定です。
ご参加希望の方は、ご連絡ください!
お待ちしております。