興奮!鳥肌!『アーモンド』読書会

読書会アパート3号室
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オンライン読書会「夜のアパート3号室」は第6夜を迎えました。
2025年5月10日(土)は『アーモンド』を課題本に選びました。


参加者は7人。

「耳だけ参加」が3人。
なんと、Instagramでこの読書会を見つけてくださった方が福岡から初参加!
今回はほかに埼玉、宮城、と三県にまたがり語り合いました!


『アーモンド』は、世界中で翻訳されて話題となった韓国の小説です。
日本でも本屋大賞2020年の翻訳部門の第1位に選ばれました。

生まれつき、脳の「扁桃体」と呼ばれる部分が小さく、喜怒哀楽などを感じられない「失感情症」の少年ユンジェが主人公の物語です。


作者のソン・ウォンピョンさんが、産まれたばかりの我が子を見て「この子が、どんな姿であっても、もし期待とまったく違う姿に成長したとしても、変わりなく愛し続けることができるだろうか」と感じ、その問いから生まれた作品なのだそう。


まずは簡単な自己紹介のあと、作品を読んでどう感じたか、聞いていきます。


みなさんの感想の一部をご紹介!





  • 「愛情とはなにか」「ふつうとは何か」を考えさせられる内容だった。
  • 頭で考える「感情」は言語化できるが、心で感じる「感情」は言葉にしにくいと感じた。
  • 私たちは意味ばかりを考えて「感じる」ことを忘れているのではないかと思った。
  • 感情があるから傷つく。ユンジェのように感情がない方が楽な面もあるかもしれない。
  • 「ふつう」に合わせることの辛さや、同調圧力について考えさせられた。
  • ユンジェを「可愛い怪物」として受け入れたおばあちゃんの姿が印象的だった。
  • ドラの「あんたは、いい子だよ。それに平凡。でもやっぱり特別な子。」という言葉が心に残った。
  • 子どもに自分の理想を押し付けてしまう親としての反省があった。
  • 家族が亡くなる描写から始まりながらも、作品全体から「希望」と「愛情」が感じられた。
  • 思春期や恋愛の描写から、ユンジェの成長がよく表現されていた。
  • 自分を認めてくれる存在がいることの大切さを感じた。
  • 母と祖母の死の場面は衝撃的で、「もっとこうしていれば」と思う展開だった。
  • ドラはユンジェにとって希望の光のような存在だった。
  • ユンジェは感情がなくても、大切な人のために行動できる優しさを持っていた。
  • ゴニは荒々しいが純粋で、ユンジェはその根本的な優しさを理解していた。
  • 「ふつう」であることにとらわれず、自分が大切だと思う家族や友達のために自分が後悔しない選択をすることの大切さを学んだ。

ひとりずつの感想を聞いた後は、フリートークで気になったところを深堀りしていきました。


どの感想にも共通していたのは、「自分自身や他者をどう受け入れるか」という問いでした。


「ふつう」って何だろう。
「感情がない」とはどういうことなのだろう。
「親として子どもを愛する」とは、どこまでのことを指すのだろう——。


作品を通じて、それぞれが抱いた問いは違っても、語り合ううちに、誰もが心の奥にある不安や願いに少しずつ手を伸ばしていくような、そんな時間になりました。


「ドラちゃんは、まるで希望の光のようだった」という感想には、みんなが頷きながら笑顔に。「あの子がいてくれて良かった」と声を揃える場面も。
また、ユンジェの「感情がない」ことと、実際の行動のやさしさが結びつかないようでいて、確かに彼は誰よりも深く愛し、誰よりもまっすぐだった、という意見にはじんとする空気が流れました。


途中で話題になったのは、「言葉にできない感情」が確かに存在するということ。
感情の言語化が重視されがちな現代社会で、「なんとなく」「ただ、そうしたいから」といった曖昧な動機の大切さが、ユンジェやドラの姿から浮かび上がってきました。


「共感って、わかったふりをすることじゃなくて、覚悟して寄り添うことなんじゃないか」
そんな声も印象的でした。


さらに、主催者が思わず鳥肌が立ってしまったエピソードが。
表紙にも描かれているこの主人公ユンジェの「無表情」なイラストですが、
これが、第1部から第4部の各トビラにも使われています。



物語は、ユンジェの語り言葉で綴られています。
彼が母親や祖母に愛されて成長していく姿や、友達やまわりのおとなたちが人間的に描かれていて、人の体温を感じながら読み進められるのですが、この章トビラに描かれた少年と目が合うと、すっと背中が寒くなるような印象を受けたのです。
「感情を持たないひと」というのは、恐怖心を与えるものなのかもしれない、と。
みんなでトビラを見返してみました。
すると、参加者のおひとりが「これ、第一部は暗い色なのに、どんどん明るくなってる!」という大発見をされました。
全員で本を開いて確認してみると、たしかに、後半に向かうにつれて、どんどん明るい色に変化していたのです。
これは、作品の希望的な展開を暗示する、すごい仕掛け!と一同驚嘆の声。思わず鳥肌が立った瞬間でした。



会の最後に、参加者のみなさんに「参加してみての感想」も伺いました。


「今回は他の参加者の感想がすごいと思った。細かいところを見ていて、本に対する愛情を感じた。石の表現や発言の意味、ユンジェのお母さんへの心理など、本当はそうだったのかと気づかされた。自分ももっとじっくり読もうと思った」
——と、他者の視点から得られる発見を語ってくれた方。


「読書会に参加するのは人生で2回目。みなさんと一緒に意見を共有するのが新鮮だった。さらっと読んだつもりだったけれど、重いテーマもあって、ハッピーエンドでもいろんな感じ方がある。人それぞれ違う視点を持っていることが、読書会の醍醐味だと思った」
——という声も。


また、「課題図書として読むと、自分だけでは気づかなかったことにたくさん出会えた」と話してくれた方もいました。


ひとつの作品を通して、他者の視点に触れることは、自分の感じ方にも優しく光を当ててくれるように感じました。


ご参加くださったみなさん、ありがとうございました!



さて、読書会「夜のアパート3号室」の次回開催は調整中。
詳細はまたお知らせしますので、気になる方はぜひ「読書会アパート3号室」のXやinstagramをチェックしてくださいね。