熱論!『車輪の下』読書会

読書会アパート3号室
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4月27日(日)、第15回読書会を行いました!
会場はすっかりおなじみの「仙台市市民活動サポートセンター」。
参加人数は過去最多の19名でした。初参加の方が4名も来てくれました。

まずは自己紹介。

おひとりずつ、参加した理由とおすすめ本を紹介していただきました。

19名による19冊のおすすめ本は、じつにバラエティ豊か。「これ、読んでみたい!」とメモを取る姿も見られました。
なかでも、初参加の方が紹介してくれたヘッセの『デミアン』には、『車輪の下』を読了されたばかりの皆さん、やはり興味津々でした。


さて、いよいよ本日の課題本です!


課題本は『車輪の下』

今回の課題本は、ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』。
思春期の苦悩、社会の圧力、個の尊重について、さまざまな角度から意見が交わされました。


いよいよ「感想」タイム


7名、6名、6名と3つのグループに分かれて話しました。


Aグループの感想

翻訳ものに苦戦、登場人物の名前も覚えにくかった。自然描写がきらきらしており、学校生活の窮屈さと対比されていた。主人公のあっけない死に、今までの苦労との落差と作者の意図を感じた。
・子どもを一個人として誠実に描いている点に感動。ハンスが自然を愛しつつも、大人の序列意識を内面化していることに気づいた。教育や社会の画一化に対する鋭い批判を読み取った。
・自然描写が美しく、田舎育ちの自分には情景がリアルに浮かんだ。ハンスに「もっと遊んでほしい」と感じた。若い時の苦労や、人生の儚さを強く感じた。
・思春期の揺れ動きや成長が丁寧に描かれていた。母性的な存在の不在がハンスの孤独を深めたと感じた。父権的な世界観の中で、ハンスが足元を失っていく様子に注目した。
・読み進めるのに苦労しつつ、ハイジ的な自然児と都会児の対比を連想した。勉強が楽しくなさそうなハンスに共感。早い段階で誰かが死ぬ予感があり、死が重く描かれていた。
・タイトル『車輪の下』がきれいに回収されていた。周囲の環境によってハンスが堕ちていく様子に胸が痛んだ。ハイルナーとの出会いがハンスにとって重要な転機だった。
・子どもの純粋な感性が教育システムによって押しつぶされる怖さを感じた。職人たちの生きる力や分かち合いの文化に、ヘッセの現代社会への問題意識を感じた。ハンスの死は、人間らしい生き方への反抗でもあったと受け取った。

Bグループの感想まとめ
  • 新潮文庫版と光文社版で読みやすさに差があった。ハンスの自我の目覚めと母親不在の影響が議論に。
  • ハンスの死は事故か自殺か意見が分かれた。意志の弱さと大人たちの無責任さが背景にあるとの意見。
  • 大人たちの期待に押しつぶされるハンスに、無条件の愛を与えられる存在がいなかったことが問題視された。
  • 宗教教育の場である神学校で、子ども扱いせず管理するだけの教育に違和感を覚えた。
  • お酒や孤独も影響し、過渡期の子どもが感傷的になり死に至った可能性があると考えた。
  • 立場が変わっても愛情を得られなかっただろうという意見も。フライクおじさんにもっと頑張ってほしかった。
  • 「車輪の下」というタイトルには、「落ちぶれる」という意味が含まれているとの考察が出た。

Cグループの感想まとめ
  • タイトルから車を連想したが違い、校長の発言で意味を理解。自然描写が美しく、最後のロマンスに甘酸っぱさを感じた。
  • 『少年の日の思い出』の方が面白かったが、本作では情景描写に注目。ドイツの格言が背景にあると知った。
  • 自然描写が目に浮かび、学校以外にも社会の抑圧を感じた。町の人々の言葉にも問題意識を見た。
  • 登場人物に自分を重ねた。植物描写にヘッセ自身を感じ、受験体験と重ね共感。うさぎ小屋のシーンが印象的。
  • 詩的な文章が素敵で、翻訳による違いも感じた。校長の「車輪の下」発言に皮肉を感じ、木の芽の比喩が印象に残った。
  • 読みやすい翻訳だった。学生時代とは違う共感があり、自然好きなヘッセの姿勢を感じた。『山月記』のような悲劇性も連想した。

ひとりで読んでいるだけでは気づかなかった視点が次々と飛び出し、このあとのフリートークでも熱い議論が交わされました。

特に話題にのぼったのは、ハンスとハイルナーの関係についてでした。
ハイルナーは自由にふるまう存在で、ハンスに新しい価値観を見せたけれど救ったわけではなかった、と。
ハンスは自我が弱く、影響を受けやすいまま社会になじめず、「根無し草」のようになってしまったという声が聞かれました。
失われた幼少期や、心の壊れやすさについてもたくさん話が広がりました。
ハンスが川に落ちたのは、寄宿学校の息苦しさが背景にあったという意見も。
最後には、事故だったのか自殺だったのか、それぞれのグループで、共通の「問い」として話し合われました。


一度読んだだけでは、深い理解が得られなかったという感想があり、皆さん大きくうなずいていました。ぜひ、過去の課題本を再読する「じっくり読書会」で取り上げてほしい、という意見も。

本を読み終わるだけでは見えてこないものを、誰かと語り合うことで深く考えることができた時間でした。
ハンスたちの物語を通して、今を生きる自分たちにも通じる問いに向き合えたと思います。

ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!



次回の読書会は!

さて、次回5月25日(日)読書会では、三島由紀夫『潮騒』を課題本に開催予定です。


参加希望の方は、ご連絡ください!