ざわつく読後感。『人間失格』読書会
4月13日(日)、過去の課題本をもう一度取り上げる「じっくり読書会」 第一回『人間失格』を行いました。
会場は、仙台市太白区にある「八木山市民センター」。
朝9時半からの開催と、いつもより早い時間でしたが、たくさんの参加者が集まってくれました。
「桜の思い出」とともに自己紹介
会場は、仙台市太白区にある「八木山市民センター」。
朝9時半からの開催と、いつもより早い時間でしたが、たくさんの参加者が集まってくれました。
「桜の思い出」とともに自己紹介
桜が満開の今週末。自己紹介では「思い出の桜」についてお聞きしました。
弘前城の桜や、石巻の日和山、角館、石割桜、一目千本桜、鳥海山に鯉のぼりと桜が一緒に見える絶景スポットなど、東北各地の美しい桜の風景が次々に語られ、春の空気が一気に広がります。
音楽と共に蘇る桜の記憶として、ケツメイシの「さくら」、ユーミンの「経る時」がこの季節になると聴きたくなる、といった声も。
音楽と共に蘇る桜の記憶として、ケツメイシの「さくら」、ユーミンの「経る時」がこの季節になると聴きたくなる、といった声も。
「榴ヶ岡公園の屋台が楽しかった」「上野公園の桜が好き」「生田緑地の桜が忘れられない」「青森のお堀に映る夜桜が幻想的」「仙台の三神峯公園は桜の種類が多く、長期間花見を楽しめる」など、それぞれの桜の思い出が語られました。
さて、いよいよ課題本の感想タイムです!
課題本は『人間失格』
2024年2月に始まった「読書会アパート3号室」は、新潮文庫の累計発行部数の上位から順に課題本を選んでいます。
(今月27日に開催する第16回は、16位のヘッセ『車輪の下』という具合)
が、すでに終了した、上位作品の読書会に参加できなかったメンバーから、もう一度やってほしいという声が挙がっていました。
そこで、今回、「過去の課題本のうち、どの作品の読書会に参加したいか」と、アンケートをとったところ、『人間失格』と『こころ』が同率1位だったのです。
ということで開催したのが、今回の「じっくり読書会」でした。
ということで開催したのが、今回の「じっくり読書会」でした。
3月30日に出店した「ZINEフェス仙台」をきっかけにこの読書会を知ってくださった方々が今回、初めて参加してくれました。
初参加5名をお迎えして、15名で読書会スタート。
7名と8名のふたつのグループに分かれて感想について話しました。
参加者の感想をご紹介!
【Aグループ】
・なぜ冒頭からアイロニーなのだろう。葉蔵は偏った視点で捉え、臆病な人柄なのではないか。
・三葉の写真を見る場面。太宰自身を見ていたのではないかと感じられた。他人を蔑んでいると感じ、性格が悪いと思った。
・ピエロのような葉蔵。アダルトチルドレンでありASDなのではないか。親に恵まれず、子どもの頃から大人のように生きることは、その後の人格形成に大きな影響があると考えられる。
・酒や薬、女性への依存する体質やコミュニケーション能力は低いが、言語化は異常にうまい、といった特徴があり、特有の生きづらさを抱えている。
・幸せになってはいけないという気持ちから自殺や自己破壊的、自罰的な行動を繰り返す。
・女性は要蔵を甘やかしている。共依存関係だったのではないか。
・自分は愛されないという気持ちを持っているのではないか。両親から愛情を感じたことがないのではないか。
・葉蔵はあまりにも救いようのない人物。自分で努力しないのに、上から目線。「恥の多い生涯を送ってきました」と言うが、本当はそのように思っていないのでは。助けてもらいたいという気持ちがあると思う。
・葉蔵はサービス精神があり、優しい人だと思う。お父さんがお土産に何が欲しいか尋ねた際、父の手帳にこっそり獅子舞と書いたところは、親の機嫌をとる現代の子どもにも通じるものがある。かわいそう。
・初めて読んだ時は、葉蔵のことをどうしようもない男だと思ったが、改めて読み返すと、「サービス精神旺盛で優しい人物」という印象に変わった。当時の家父長制の影響で大切にされなかった事情から、葉蔵は大人の犠牲者になったのだと思う。
・初めて太宰の作品を読んだ。最初は葉蔵のことをクズだと思ったが、そのうちに「クズさ」とは何かと考えるようになった。葉蔵が幼少期に下男下女に犯されていたことや、思い通りにいかないことの多かった昭和初期という時代背景も影響しているのではないか。
・『人間失格』は、最初に十代の頃に読み、それから今までの間に十回ほど読み返した。葉蔵は能力が高いと思う。この程度で人間失格と言われたら、自分はどうなるのだろうかと思った。
・三葉の写真を見る場面。太宰自身を見ていたのではないかと感じられた。他人を蔑んでいると感じ、性格が悪いと思った。
・ピエロのような葉蔵。アダルトチルドレンでありASDなのではないか。親に恵まれず、子どもの頃から大人のように生きることは、その後の人格形成に大きな影響があると考えられる。
・酒や薬、女性への依存する体質やコミュニケーション能力は低いが、言語化は異常にうまい、といった特徴があり、特有の生きづらさを抱えている。
・幸せになってはいけないという気持ちから自殺や自己破壊的、自罰的な行動を繰り返す。
・女性は要蔵を甘やかしている。共依存関係だったのではないか。
・自分は愛されないという気持ちを持っているのではないか。両親から愛情を感じたことがないのではないか。
・葉蔵はあまりにも救いようのない人物。自分で努力しないのに、上から目線。「恥の多い生涯を送ってきました」と言うが、本当はそのように思っていないのでは。助けてもらいたいという気持ちがあると思う。
・葉蔵はサービス精神があり、優しい人だと思う。お父さんがお土産に何が欲しいか尋ねた際、父の手帳にこっそり獅子舞と書いたところは、親の機嫌をとる現代の子どもにも通じるものがある。かわいそう。
・初めて読んだ時は、葉蔵のことをどうしようもない男だと思ったが、改めて読み返すと、「サービス精神旺盛で優しい人物」という印象に変わった。当時の家父長制の影響で大切にされなかった事情から、葉蔵は大人の犠牲者になったのだと思う。
・初めて太宰の作品を読んだ。最初は葉蔵のことをクズだと思ったが、そのうちに「クズさ」とは何かと考えるようになった。葉蔵が幼少期に下男下女に犯されていたことや、思い通りにいかないことの多かった昭和初期という時代背景も影響しているのではないか。
・『人間失格』は、最初に十代の頃に読み、それから今までの間に十回ほど読み返した。葉蔵は能力が高いと思う。この程度で人間失格と言われたら、自分はどうなるのだろうかと思った。
【Bグループ】
・葉蔵と太宰を重ねて読んだ人が多かった。
・父親は悪いキャラクターなのか。詳しい描写がほとんどないのに、フォーカスされている。父親が他人から搾取をして得たお金で生活しているという罪悪感があったのでは。
・葉蔵は「人間失格」なのか。失格というけど、一番人間らしい人物なのではないか。
・(作中で「悲劇」と「喜劇」について話す場面があるが)、この作品は悲劇なのか、喜劇なのか。20代で読むと悲劇的、30代で読むと、自分の人生経験などでおもしろく感じる。女性にすがって失敗しまくる葉蔵がユーモラス。
・人間の成長過程で、葉蔵のようにならないためにはどういう事が必要なんだろう。
・葉蔵は、親から認められたり、喧嘩して仲直りしたりといった経験がないため、親子関係の構築ができず、自己肯定感を得られなかったのではないか。
・葉蔵の人生は、第三者から見るとそこまで悲惨でもないのに、本人の中ではすべてが悲劇になる。外からの視点が抜けていて、ずっと主観の世界で苦しんでいるように見えた。
・太宰治自身は、優しくて人当たりが良かったらしい。だからこそ、対人関係に苦しんでいたのかもしれない。
・葉蔵は2回自殺未遂をしているが、太宰自身は4回自殺を試みている。
・手記として書いていたというのが良かった。あえて手記という形にしたのは、そこにユーモアがあったからなのではないか。
・父親は悪いキャラクターなのか。詳しい描写がほとんどないのに、フォーカスされている。父親が他人から搾取をして得たお金で生活しているという罪悪感があったのでは。
・葉蔵は「人間失格」なのか。失格というけど、一番人間らしい人物なのではないか。
・(作中で「悲劇」と「喜劇」について話す場面があるが)、この作品は悲劇なのか、喜劇なのか。20代で読むと悲劇的、30代で読むと、自分の人生経験などでおもしろく感じる。女性にすがって失敗しまくる葉蔵がユーモラス。
・人間の成長過程で、葉蔵のようにならないためにはどういう事が必要なんだろう。
・葉蔵は、親から認められたり、喧嘩して仲直りしたりといった経験がないため、親子関係の構築ができず、自己肯定感を得られなかったのではないか。
・葉蔵の人生は、第三者から見るとそこまで悲惨でもないのに、本人の中ではすべてが悲劇になる。外からの視点が抜けていて、ずっと主観の世界で苦しんでいるように見えた。
・太宰治自身は、優しくて人当たりが良かったらしい。だからこそ、対人関係に苦しんでいたのかもしれない。
・葉蔵は2回自殺未遂をしているが、太宰自身は4回自殺を試みている。
・手記として書いていたというのが良かった。あえて手記という形にしたのは、そこにユーモアがあったからなのではないか。
とても、ここには書ききれないほど、一人ひとりの感想は、内容も量もかなり重たく、次々に話したいことが溢れてくるという印象でした。
ひとりずつ語ったあとは、グループごとにフリートークで深堀りしていきました。他の人の感想を聞いて思ったことや、言い残したことなど、対話をしていくうちに、さらに作品の解釈が深くなっていきました。
読書会を終えて──参加者の声から
読書会の最後には、参加者それぞれから率直な感想が寄せられました。
初めて太宰治の作品を読んだという人も多く、「思っていたより面白かった」「いろんな意見を聞けたのが新鮮だった」と語られ、読書体験が一層深まった様子でした。
また、これまで太宰にあまり良い印象を持っていなかった人からは、「再読を通じて、葉蔵に対する見方が変わった」「昔は拒否感があったが、今回は憐れみを感じた」といった声もありました。
『人間失格』を読むのは初めてではないという人からは、「繰り返し読むことで見えてくるものがある」「十代の頃に読んだ体験が自分の財産になっている」といった、時間をかけてこの作品と向き合ってきた思いも共有されました。
印象的だったのは、「同じ本でも、これだけ違う感想が出てくるのがおもしろい」「一人で読むより、みんなで読むことで見方が広がる」といった、読書会ならではの発見を楽しむ声です。
中には、「読書会で出た“葉蔵をボコボコにして山に放り投げる”という意見が印象に残った」と笑いながら話す人や、「葉蔵に共感する人が意外と少なくて驚いた」という声もありました。
「自分の意見を自由に言えてよかった」「いろんな視点に触れることで、自分も気づきが得られた」など、初参加の方々からも前向きな感想が多く聞かれ、終始リラックスした雰囲気の中で語り合うことができました。
なかには「太宰は精神的に病んでいる作家という印象だったけれど、話を聞いているうちに葉蔵に愛すべき一面があると気づいた」という声も。
そして、「この作品はこれからも何度も読み返したい」「また別の太宰作品も読んでみたい」と、次なる読書への意欲をにじませるコメントも多く寄せられました。
参加者一人ひとりの視点が交差し、『人間失格』という作品が多面的に立ち上がってくる――そんな時間が流れた読書会でした。読み手の数だけ解釈があることを改めて感じさせられる、豊かなひとときとなりました。
ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!
来月も『人間失格』!!!
さて、次回の「じっくり読書会」第2回もまた『人間失格』を取り上げます。話せば話すほど、話したいことが湧いてくるすごい作品です。初参加の方も大歓迎です。ぜひお気軽にご参加ください!