薄いのに厚い。『伊豆の踊子』読書会!

読書会アパート3号室
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3月23日(日)、第14回読書会を行いました。
会場は「仙台市市民活動サポートセンター」。
今回は午前中からの開催となりました。
参加人数は11名。初参加の方が3名来てくれました。

まずは自己紹介。

おひとりずつ、参加した理由と「好きな食べ物」をお聞きしました。
印象的だったのは、男性陣が全員「パフェ」「クレープ」「ケーキ」と口々にスイーツを挙げていたこと!
それに対して、女性陣は「米」とか「肉」とか「カツ丼」という答えが挙がり、おもしろかったです。
なにげなく選んだ質問だったのですが、
その後に参加者のオススメ本で『好きな食べ物がみつからない』というエッセイ本の紹介があり、皆さんの「好きな食べ物」が言外の意味を含んでいるように感じられました。

皆さんのおすすめ本紹介!

1冊ずつ、おすすめの本を挙げていただきました。
初参加の方の紹介本は、興味津々です。
今日もまたジャンルが多岐にわたりました。
主催者の先月のおすすめ本を紹介された方がいました。
自分がおすすめした本を読んでもらえるのって嬉しいですね。
今回も、ここで紹介されなければ絶対に出合えなかったような本ばかりで、どれもとても面白そう!またまた刺激を受けました。


さて、いよいよ本日の課題本です!


課題本は『伊豆の踊子』


今回は、川端康成の代表作『伊豆の踊子』です。
青春文学としての側面や、川端自身の経験が投影されている点、時代背景における旅芸人の立場など、さまざまな視点から意見が交わされました。

いよいよ感想タイム!
5名と6名のふたつのグループに分かれて話しました。

「感想」をご紹介!


・端的に心情を表現する美しさがある。何度も読み返したくなる作品。
・主人公が踊り子を「踊り子」と呼び続けたのは、一定の距離を保つためだったのでは。
・川端自身が幼少期に両親を亡くしているから、孤独や家族愛のテーマが強く感じられる。
・「花のように笑う」という表現が印象的で、踊り子の無邪気さが際立つ。
・主人公は旅芸人一家との出会いを通して、少しずつ人間関係に心を開いていった。
・最後に涙を流したのは恋の終わりではなく、家族の温かさを求めていたからでは。
・文章の「省略の美」が際立つ。説明をしすぎないところが魅力的。
・踊り子を初めは妙齢の女性だと思っていたが、子供だと分かって印象が変わった。
・差別について考えさせられた。旅芸人に対する社会のまなざしが色濃く反映されている。
・踊り子たちと一緒に下田へ行かなかった理由には、主人公の無意識の差別意識も影響しているのでは。
・家族愛に似たものを感じて癒されたが、最後にはその世界から離れなければならなかった。
・旅芸人との関わりを通じて、人との和解を果たしていく物語とも読める。
・最後の涙には、踊り子や旅芸人たちに対する別れの辛さのほかに、越えられない身分の壁の両方が込められているように感じた。この世の不条理を受け入れざるをえないことを嘆いているのかもしれない。
・全体的に気持ち悪いと感じた。川端は処女性を重んじている。踊り子が子どもとして描かれているが、不快感を感じる。
・描写が美しく、日本の風景が印象的に描かれている。
・死んだ赤ちゃんや雨の描写に意味があるのか疑問を持った。
・孤児根性を持った主人公が、人との関わりを通じて感情や考えが変わっていく。偶然出会った人から良い評価を受けて、感情が変化する。
・旅芸人や社会階層に関する考察があり、周囲の人々は社会的地位(一高の帽子)を重視するが、主人公はそれを気にしない。
・主題は、美しい日本の風景と、人との関わり方、旅を通じて調和を求めるテーマ。
・物語の流れは、最後の場面に向けて進んでいて、その結末に至る過程が重要。「気持ち悪い」と感じる部分を切り捨てずに、物語の意義を理解することが大切かも。


フリートークで深掘り


感想をもとに、さらに話を広げていきました。

「物語の中で描かれる、女性や社会的な階層に対する“差別”について」
「最後の“涙”はどんな感情の表れだったのか?」
「東京に戻る理由『旅費がなくなった』は本当だったのか?」
「川端康成自身の人生と作品の関係は?『孤児根性』が作品にもたらすものとは?」
などについて、深掘りしていきました。
今回は人数がいつもより少ないため、感想タイムを早めに切り上げようと思っていたのですが、話し合っているうちに、その考えが間違っていたことに気付きました。
語り足りず、結局数分オーバーしてしまったほどに盛り上がりました。

ひとりで読んでいるだけでは気づかなかった新たな視点が次々と飛び出しました。

また、海外で実際に受けた差別経験やスクールカーストなど、現代の差別についての意見もあり、作品を通して社会について考える時間にもなりました。


何度も読み返したくなる物語

『伊豆の踊子』は短編ながらも奥深く、何度も読むたびに新しい発見がある作品でした。
特に、美しい文章と余白の多い表現が、読者それぞれの解釈を生み出しているのが印象的でした。

ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!

次回の読書会は!

さて、次回4月27日(日)読書会では、ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』を課題本に開催予定です。
ご参加希望の方は、ご連絡ください。