革命とは?!『斜陽』読書会

読書会アパート3号室
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10月27日(日)、第9回読書会を仙台市青葉区の木町通市民センター和室にて行いました。主催者を含めて10名での開催となりました。
初めての方が2名いらっしゃり、まずは自己紹介!


好きな”スウプ”は?

今回は、課題本『斜陽』の冒頭場面に紐づけして
「好きなスウプ(スープ)」について聞いてみました。
ポタージュスープやミネストローネ、豚汁、マーラータン、ビスクなどなど…
本好きな人は食いしん坊が多いと聞いたことがありますが、
みなさんおいしそうな説明をされるので、おなかが空いてしまいました。
お菓子を食べながら、なごやかにスタート。


課題本は太宰治の『斜陽』!
【概要】
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。



今回の課題本は太宰治『斜陽』です。
3月に行った第2回読書会『人間失格』に続いて、太宰作品は2作目となります。『人間失格』は参加者が5名だったので、だいぶメンバーが増えました。
感慨深い。


はじめに、主催者から『斜陽』の背景について説明。
太宰の娘である太田治子さんの著書『明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子』の中で「斜陽」について書かれた内容を紹介しました。
「斜陽」は太田静子さんの日記を下敷きとして書かれているらしい…と。
が、あまり情報を知ってしまうと、作品の印象を左右してしまうので、ほどほどにして「感想タイム」へ。


感想をご紹介!

参加者のみなさんから出た感想コメントの一部をご紹介します。


・貴族が古い道徳を破壊して、本当の恋を知る話だと思った。
・かず子は本当にたくましいと思った。直治の方が共感できた。
・夕日に照らされたお母様が、飛びつきたいほど美しいという描写があったが、かず子は美しいものに飛びつきたい人なんだと思った。
・かず子は本当は上原に興味がなさそう。身ごもることに意味があるので、相手は誰でもよかったのでは。
・上原を「マイコメディアン」と呼んだのは、彼を道化っぽいと感じて、心の中では馬鹿にしているのでは。
・すごく「死」について書かれていると感じた。蛇が出てくる時に死を予感させたり、四季咲きの薔薇の描写など。編み物をしていることはお母様に死なないでほしいという思いの表れなのではないか。
・かず子はお母さんを好きと言っているが、「ぐずぐずしていらっしゃる」というような表現もある。リスペクトしながら負けたくない気持ちもあったかも。
・かず子、こわい。ラブレターが狂気的すぎて、上原は引いてるんじゃないかと思った。
・妾が当たり前な時代だから、シングルマザーになって子どもを育てる決意はそれほど珍しくなかったのでは。
・最後の貴婦人である母親をかいがいしく世話している自分に酔っている部分もあったかもしれない。
・母娘の共依存関係があり、母親が死ぬ前から依存先を探していたのではないか。慈愛とさげすみが共存しているのが、かず子。
・女親の愛情は、男(息子)に向く。女である娘は、家のことをしなくちゃいけない。弟の直治は優遇され、甘やかされている。
・かず子は、恋に恋している感じがする。
・岩波文庫『斜陽』に収められている短編「おさん」は、上原の後日談のようにも読める
・登場人物の誰にも共感できない。本人たちはいたって真面目に生きているのに、はたから見ると、狂気的に見えるのが面白い。
・新潮文庫の表紙が良い。太陽のように見える円形のモチーフがなぜか二つある。母親を表現しているのかも。
・この時代の作品としては、女性視点のやわらかい語り口で、読みやすい表記になっていると感じた。
・「これが、あの、不安、とかいう感情なのであろうか」から始まる長い一文にグッときた。不安という感情をここまで書き表せるんだ!と思った。
・太宰の他の作品で「僕たちの悩みなんて、所詮趣味なんだ」と書いてあった。お金持ちが言う「死にたい」なんて、そんなものだろうと思った。
・かず子についていけなかった。
・「私は、勝ったと思っています。」というかず子の言葉。ジャンヌダルクの絵が思い浮かんだ。かず子は何に勝ったんだろう?と思った。
・精神的な退廃の極限に美がある。かず子はひとりの人間として滅ぶことによって新しい生を見出したことが勝利だったのか。貴族としての道徳を壊して、自分の内面を破壊しての新しい自分。


みなさん、じっくり、言葉を選びながら語ってくれました。
それぞれ本を読んで感じたことや、他の人に聞いてみたいことを話してもらいましたが、「おもしろかった」という感想は共通していました。


時代背景や、階級制度が今の私たちとは、かなり異なるので、登場人物たちのそれぞれの心理描写に感情移入するというのは、なかなか難しかったかもしれません。


「かず子のパワフルさがすごい」については全員一致。今の時代にこんな人がいたら、ストーカーで捕まるんじゃない?と。

さらに、「革命っていったい何だったんだろう」という問いが出されて、
みんなで考えを深めました。古い道徳を壊すことが革命なのかもしれないけれど、この時代の「道徳」って?
そもそも道徳教育はされていたのか?「修身」というものがあったらしい、など。
日本は戦争に負けて、民主主義に移行する過渡期に、人々は何を信じて生きていけばいいのかわからなかったのでは。
「人間は、みな、同じものだ」とは言うけれど、混沌とした価値観のなかに置かれて、不安だったのではないか。


「犠牲者」と書かれているが、いったい誰が、なんの犠牲者だったのか。
上原、直治、かず子が、この時代の犠牲者という認識はあるけれど、お母様は犠牲者ではなかったのではないか。という話も出ました。


さらに、作品に描かれた母娘問題について話したいという声が上がりました。
また最初のほうに出てくる「恋、と書いたら、あと、書けなくなった」という言葉の意味や、作中に登場する蛇があらわしているものは何か、作品にたびたび描かれるキリスト教との関連などなど・・・
湧いてくる疑問は尽きず…。
話し合いたいテーマがたくさん見つかりましたが、残念ながら時間切れ。

次回はもう少し広い会場にして、グループを分けて少人数で、テーマについての深い対話ができるようにしたいと思いました。
ありがたいことに参加者が増えてきたので、運営方法も工夫していこうと思います。


おすすめ本の紹介タイム

最後に、今読んでいる本や、みんなに薦めたい本について一人一冊ずつ紹介していただきました。
話題の新刊本や古典の名作、アーティストのエッセイ本、選挙がテーマの本、「本」についてのアンソロジー、本屋大賞のベストセラー小説などなど……。
今回もまた、みなさんの選書センスあふれる本ばかりでした!
やはり、どれもこれも読みたくなってしまいます。

あっという間の3時間。
次回は、11月24日(日)仙台市民活動サポートセンターにて。
はじめて午前中からの開催となります。
10:00~13:00と、お昼をまたぐので、
おせんべいでもかじりながら、語り合いましょう。

最近、すぐに定員に達してしまうので、お申し込みはお早めに!
お申し込みはこちらから。


(この日は、読書会のあとに懇親会。
乾杯の掛け声は「ギロチンギロチン、シュルシュルシュ」笑
『斜陽』の余韻たっぷりに盛り上がりました!)