語り足りない!9/22『破戒』読書会

読書会アパート3号室
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9月22日(日)、第8回読書会を木町通市民センターにて行いました。
今回は初めての和室!
畳に座布団で、なんともリラックスした雰囲気です。
出身地や「最近おいしかったもの」、「ハマっていること」など、
自己紹介からスタート。


初参加の3名を含めて、6名の参加者のみなさん。
今回の課題本はボリュームがあり、重たいテーマだったのですが、予想より参加者が多くて驚きました。


課題本は島崎藤村『破戒』!
【本の紹介】
明治後期、部落出身の教員瀬川丑松は父親から身分を隠せと堅く戒められていたにもかかわらず、同じ宿命を持つ解放運動家、猪子蓮太郎の壮烈な死に心を動かされ、ついに父の戒めを破ってしまう。その結果、偽善にみちた社会は丑松を苛烈に追いつめていった……。激しい正義感をもって社会問題に対処し、目ざめた者の内面的相剋を描き近代日本文学の頂点をなす傑作。


新潮文庫(令和5年10月20日刊の第153刷)では、500ページもの大作!持ち重りする重量感にはちょっとひるんでしまうほど。
そして、テーマは部落差別、青年教師の葛藤を描いた社会的な問題作。


読んだ参加者の感想は、「こんなにおもしろい作品だと思わなかった」「難しいテーマのわりに読みやすかった」という声が続出。


では、”感想タイム”で出たコメントをずらっとご紹介!


・風景描写がすごく丁寧。季節感を大事にしていると感じた。
・たびたび出てくる「光」の描写。主人公の気持ちを重ねて表している。
・告白小説か、差別小説かという議論があるが、丑松が自分の中に抱えていたものを外に放つ「告白小説」として読みたいと思った。
・エンタメ小説が明治にあったんだ!スティーブン・キング作品に似ていると思った。
・銀之助がかっこよかった。銀之助がいたから名作として残った。
・敬之進はうつ病だったのでは。台詞には共感した。
・20年前に京都で差別反対のデモ行進をしていた。『四国巡礼』という本でも、穢多の「乞食遍路」についてジャーナリストが取材をしていた。いまだに同和問題は根強く残っているのではないか。
・ラストの「雪」は差別意識の象徴ではないか。けっして溶けることのない冷たい差別の上で、自分の力で前に進むしかない橇(そり)に乗り、必ずしも順風満帆ではない世界へ漕ぎ出していく。
・新平民というワードの強さ。
・自分の地元でも「部落」という言葉はあたり前に使われていた。100年以上たっても変わっていない。田舎の悪いところだと思った。
・猪子蓮太郎について。「我が穢多なり」から始まるのがすごくよかった。自分の出自を認めて、やらなければいけないことをやっていくのがかっこいい。
・出自は選べないし、変えられない。自分より下の人を作って優越感に浸らなければ自分を保てない時代でもあったのでは。
・差別される側の気持ちが描かれているけれど、差別する側の気持ちも考えたい。なぜ人は差別するのか。
・主人公の丑松。登場人物の中では一番品があってかっこいい。自分の感情を抑えている。奥ゆかしい。心の中は秘密をかかえてぐちゃぐちゃなのに、静かな美しさがある。
・映画で丑松を演じた間宮祥太郎が「池の水面がピーンと張っているような」と表現していて、共感した。
・丑松のこの後のテキサス行きはどうでもいい。差別する側、される側の心理を描き切ったことに価値がある。
・丑松の告白。今まで読んだものの中で一番の名台詞。めっちゃ泣いた。
・屠牛場の場面。差別されている人が働いていて、差別される中でも上下があるのが意外。社会から排除・抑圧された人たちの中にも、小さな社会があったんだと知った。
・「忘れるな」という言葉。父の世代が守ってきた、生き延びるための戒め。父を殺した牛の屠殺の場面で描かれているのが象徴的。子が親を超越するというテーマがあるのでは。
・教育を受けて先生になった身分の人ですら、差別が当たり前。差別とすら思っていない、根深いものだったんだと思った。
・最後に急に大日向が出てきた。蛇足的な感じがしたが、希望が持てる終わり方にしたかったのかな。
・男性っぽい文章。「ますらおぶり」だと感じた。明治の男性はますらおぶりなのかな。
・差別がなければ彼らの気質が出てこない。この状況だからこそ人間の美点が出て、より人間らしくなる。
・差別があったからこそ『破戒』は良い小説として読まれたのでは。
・こんなに面白い小説だと思ってなかった。読まないともったいない。


いや~。深い。


幼少期に生家を出た丑松にとっては、
父と子の唯一のつながりがこの「戒」だったのではないか、
猪子先生を前にしても告白できなかった展開について。
「人はなぜ差別をするのか」「この後、丑松はどう生きたのか」という
問いに、慎重に言葉を選びながら、自分の考えを話してくださる、参加者のみなさん。

他の人がぽつぽつと語るのを聞きながら、自分の内面を重ね合わせ、
思考の水の中へと潜っていく、静かな時間。
もう一度作品を味わい、かみしめる……。
自分のなかに、なにかが、時を越えて深く深く染み入っていく。

が、残念ながら、終了時間。
あ~!という感嘆の声が聞かれました。
「とても1回では語り切れない」「もう一度『破戒』で読書会をやってほしい」と・・・。

たしかに!
それほどまでに、深~い作品でした。


オススメ本紹介タイム!

初参加のおふたりが『破戒』を読んでいたら思い出したということで、灰谷健次郎の『兎の眼』や、中上健次の『枯木灘』などを紹介してくれました。
そのほかにも、イチオシ本が次々に紹介されましたが、どれもこれもすごい本ばかり!
またまた積読の山が高くなりそうな予感。



さて、次回は『斜陽』!

第9回の読書会は、10月27日(日)、同会場にて。
課題本は、太宰治『斜陽』です。
ありがたいことに、リピーターが増えてきて、
すでに定員まであと1名となっております。
参加をご希望の方はお早めにお申込みください!