バドミントンは、耳でも楽しい。体育館にひびく音の話
バドミントンを音だけで表すなら、どんな音が浮かぶだろう。ラケットでシャトルを打つ、あの乾いた音。床を踏むシューズの音。ネットの向こうから聞こえる声。テレビで見るとシャトルの速さに目が向きやすいけれど、体育館にいると、いろいろな音が重なっていることに気づく。今回は、フォームや点数から少し離れて、バドミントンを「耳」で楽しむ話をしてみたい。専門的な聞き分けは必要なし。いつもの一打にも、案外いろんな表情がある。
同じ一打でも、同じ音にはならない
ラケットとシャトルが触れる瞬間の音は、毎回まったく同じではない。強く打ったときには鋭く響くことがあるし、ネット際でそっと返せば、小さな音になる。ラケットのどこに当たったか、どんな当たり方だったかによっても、耳に届く印象は変わる。
ただ、ここでやりたいのは音の採点ではない。「いい音がしたから正解」「鈍い音だから失敗」と決めなくて大丈夫。道具や打ち方が違えば音も違うし、響きだけでプレーの良し悪しが全部わかるわけではないから。
むしろ面白いのは、同じラケットを振っているつもりでも一球ごとの差があること。今のは軽い音だったな、さっきは思ったより大きく響いたな。そのくらいの受け止め方で十分だ。結果とは別に、一打そのものを味わう入口がひとつ増える。
体育館には、いくつものリズムがある
ラリーが続くと、打球音の間隔にも変化が出てくる。高く上がったシャトルが落ちてくるまでには少し間があり、速い打ち合いでは音が短い間隔で行き来する。一定のテンポで続くように思えても、ふわりとした一球が入ると、その流れが変わる。
これは音楽のように、きれいな拍子にそろえるものではない。むしろそろわないリズムだから面白い。打つ音のあとに足音が続いたり、少し静かになってから次の音が響いたり。シャトルの往復には、そのつど違う間がある。
もちろん、プレー中に音を分析し続ける必要はない。目の前のシャトルを追っていれば、そんな余裕がないこともある。ひと区切りついたときに耳に残ったテンポを思い返すくらいでもいい。バドミントンは速いスポーツ、というひと言だけでは収まらない緩急を感じられる。
声は、大きさより届き方
体育館で聞こえるのは、ラケットやシューズの音だけではない。点数を確認する声、プレーの合間のやりとり、笑い声。人の声も、その場の音の大事な一部だ。ただ、声がよく響く場所だからこそ、大きければ必ず伝わる、というわけでもない。
隣のコートの音と重なったり、相手がシャトルを見ていて気づかなかったりすることもある。必要なことを伝えるなら、相手に向けて短くがわかりやすい。返事が聞こえなければ、伝わったつもりで進めず、もう一度確かめればいい。
このサークルには海外出身の参加者もいて、言葉の聞き取りやすさは人によって違う。だからこそ、難しい言い回しを重ねるより、顔を向けて、はっきり話すことが役に立つ。聞き取れなかったときの聞き返しやすさも大切にしたい。にぎやかさの中にも、そうした小さな余地があると過ごしやすい。
にぎやかな音が、少し負担になるときも
音の楽しさを書いてきたけれど、体育館の響き方が好きな人ばかりとは限らない。複数のコートで一斉にラリーが始まると、思った以上の音量になることもある。普段は平気でも、その日の体調によって落ち着かなく感じる場合だってある。
そんなときは、無理に慣れようとしないでほしい。安全な場所でいったん休む、コートから少し距離を取るなど、自分が楽に過ごせる位置を探していい。休憩中まで、ずっとにぎやかな輪の真ん中にいる必要はない。
一方で、周りも必要以上に大声を張り続けないように気をつけたい。楽しさは声の大きさだけでは決まらないし、静かに楽しんでいる人もいる。年齢も経験もさまざまな場所だから、心地よい音量の違いがあることを覚えておくだけでも、お互いに過ごしやすくなると思う。
次の一球は、どんな音だろう
初めてラケットを持つときは、まずシャトルに当てるだけでも忙しい。それでも、当たった瞬間には手応えと一緒に音が返ってくる。空振りとは違う、確かに触れたとわかる短い響き。初心者にとっても、耳で受け取れる反応は身近な楽しみのひとつだ。
うまく説明できなくてもいいし、誰かと感想をそろえる必要もない。今日はこの響きが好きだった、くらいの小さな好みがあっていい。借りられるラケットもあるので、最初から道具をそろえなくても、その感触と音を試せる。
次に体育館に来たら、打ち始めの数球だけでも音に少し意識を向けてみてほしい。遠くのコートの響きと、手元で鳴る一打は、きっと同じには聞こえない。ラケットを振る時間に、自分の耳で見つける楽しみも加えてみよう。