ダブルスの声かけは、励ましより「情報」が頼りになる
「ドンマイ!」のあと、次のラリーでも同じ場所にシャトルが落ちる。ダブルスでは、雰囲気よく声をかけているのに、二人の動きがかみ合わないことがある。励ますのが悪いわけじゃない。ただ、気持ちを支える言葉と、プレーを合わせる言葉は、少し役割が違うんだよね。今回は、サークルで初めて組む相手とも使いやすい「声かけ」を考えてみたい。大きな声を出すのが得意でなくても、伝える中身を絞れば、二人で動くための会話はつくれる。
まずは「どっちが取る?」を減らそう
ダブルスで困るのは、難しい球だけじゃない。二人の間にふわっと上がった球も、意外とやっかいだ。「相手が取るかな」と遠慮したり、反対に二人ともラケットを出したりする。こういう場面では、技術の前に担当の共有が必要になる。
ゲーム前に、中央の球で迷ったらどうするか、ひと言だけ相談しておこう。たとえば「余裕がある球は、取る人が『はい』と言おう」と決める。すべての球に声を出すのではなく、判断が重なりやすい場面に絞ると使いやすい。どちらが取るべきかは、位置や体勢、利き腕によって変わるので、いつも片方に任せる決め方にはしなくていい。
大事なのは、声そのものより同じ意味で受け取れること。「はい」が「自分が取る」なのか「お願い」なのか曖昧だと、かえって迷ってしまう。短い言葉ほど、最初のすり合わせが効いてくる。
ラリー中は、短く、早く、必要なときに
シャトルが飛んでいる間に、長い説明を聞く余裕はほとんどない。「その球は私が後ろから入るから任せて」と言い終わるころには、打点を過ぎてしまう。ラリー中の声は、文章ではなく短い合図として考えるといい。
・「はい」など、自分が取ることを伝える声
・「お願い」など、相手に任せることを伝える声
・「アウト」など、球を見送る判断を共有する声
ただし、どの言葉も間に合うタイミングで出してこそ役に立つ。相手が打ち始めてから急に「アウト!」と叫ぶと、スイングを途中で止めようとして、かえって動きが乱れることもある。判断が遅れたなら、無理に声で修正しようとしない選択も必要だ。
なお、仲間同士の「アウト」は見送りの相談であって、正式な判定を上書きするものではない。相手が打つ瞬間にわざと叫ぶなど、妨害になる声かけも避けよう。声は味方を助けるために使いたい。
失点後は、原因探しより次の一球
ミスの直後に「今のは前に出ないと」「もっと早く構えて」と説明したくなることはある。でも、本人も失敗に気づいているところへ情報を重ねると、次のサーブへの準備まで遅れやすい。まずは息を整え、必要なら次の一手だけを共有しよう。
たとえば「次は私が後ろを取るね」「サーブは短く出すつもり」と、自分の行動予定を伝える。相手を評価する言い方ではなく、これから何をするかの話なら、受け取る側も動きを想像しやすい。「ちゃんと」「しっかり」より、具体的な言葉のほうが二人のずれを直しやすいんだ。
もちろん、毎回相談する必要はない。失点のたびに会議を始めると、プレーの流れも止まってしまう。すぐ決められないことはゲーム後に回し、その場では一つだけ伝える。試合では、認められた間隔の中で簡潔に話し、プレーを不当に遅らせないことも忘れずに。
アドバイスは、声をかける前に許可を取る
サークルには、課題を直したい人もいれば、まずは楽しくラリーを続けたい人もいる。同じペアになったからといって、細かな指導を望んでいるとは限らない。技術の話をしたくなったら、「気づいたことを一つ伝えてもいい?」と確認を挟むだけで、会話の負担はかなり変わる。
伝える場合も、「動きが悪い」では範囲が広すぎる。「私が前に出たとき、後ろを任せてもいい?」のように、二人の連係に関わる相談から始めると話しやすい。相手のフォームを直すことと、ペアとして役割を合わせることは別の話だ。
そして、聞く側にも「今は一つずつ試したい」「詳しい話は休憩中にお願い」と伝える余地があっていい。助言を全部すぐ実行する必要はない。お互いの受け取れる量を知ることも、ダブルスの大切な準備になる。
静かなペアでも、連係はつくれる
声がよく出るペアを見ると、それだけで息が合っているように感じるかもしれない。でも、会話の量と連係のよさは同じではない。たくさん励ましてほしい人もいれば、短い確認だけのほうが集中しやすい人もいる。目指したいのはにぎやかさではなく、迷いが減るやり取りだ。
主催側としても、「もっと声を出そう」と一律に求めるより、組んだ直後に名前や合図を確認できるひと呼吸を用意したい。接触しそうな場面では安全のための声が必要だけれど、普段の声量やテンションまでそろえる必要はない。
次にコートへ入るときは、「迷った球は、取る人が声を出そう」と一つだけ相談してみよう。うまい励まし文句を探すより、二人に必要な情報を一つ増やす。その小さな意思表示があるだけで、隣の相手はずっと動きやすくなるはずだ。