天文座が挑む、AI×演劇の新時代

劇団天文座
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はじめに

劇団「天文座」を運営していて、最近つくづく思うのは「演劇界はもっと変わっていい」ということです。


私たちは現代演劇の理論学習と実践的な演技練習を大切にしながら、最新のテクノロジーを積極的に取り入れています。「AIと演劇って相性悪そう」と思われがちですが、実際に使ってみると本当に便利で、稽古の効率が格段に上がりました。


今回は、私たちがどんな風にAIを活用しているか、そして将来どんなことを目指しているかをお話しします。


AIを使った稽古の記録と活用

3時間の稽古を余すことなく活用

私たちは毎回の稽古を音声データとして録音し、AIツール(ノートブックLM、Claudeなど)で文字起こしと要約を行っています。これが本当に「めっちゃ便利」なんです。


3時間の稽古から得られる情報って、実はものすごく膨大なんですよね。演出家の指導内容、役者同士の議論、気づいたこと、改善点など。以前は記憶に頼っていた部分が多かったのですが、今では全てを文字として残せるので、過去の稽古内容もいつでも振り返ることができます。


有料ツールに匹敵する無料ツールの活用法も研究していて、コストを抑えながら効率化を実現しています。


SNSでの情報発信が想像以上の効果

文字起こしされた稽古内容は、私たちのTwitterアカウントで「ノート」として公開しています。演劇の稽古って普通は閉ざされた世界だと思われがちですが、オープンにすることで多くの人に興味を持ってもらえるんです。


TikTokやInstagramでの発信も積極的に行っていて、TikTokでは2.6万回再生、Instagramでは1.2万回再生を記録しました。フォロワー数も順調に増えていて、これが広告収益にも繋がっています。


メンバーの個人発信も計画中

劇団員にも「ラジオ」形式で稽古の振り返りや考えを15分程度録音してもらい、それをAIで文字起こししてブログ記事にする計画を進めています。アフィリエイト収益化も視野に入れて、劇団全体の事業拡大をメンバー全員で支えていこうと思っています。


具体的な事業展開計画

収益目標を明確に設定

夢を語るだけでなく、具体的な数字で目標を設定しています。まずは月5万円、将来的には月15万円の広告収益を目指しています。


この収益を元手に、さらなる事業展開を考えています。座長がよく言うのは「想像できた段階で現実。あとは達成するためのプランを立てるだけ」ということ。実際にプランを立てて、一歩ずつ実現していきたいと思っています。


3拠点体制の構築

広告収益を基に、公演ができる倉庫を借りたり、既存の拠点を増やして「3拠点」体制を構築することを検討しています。劇団の事務所やアトリエ公演ができる場所を増やすことで、活動の幅を広げていきたいです。


劇団員の生活支援

地方出身の劇団員のために、月2~3万円程度の家賃で住める寮やシェアハウスを運営する構想があります。演劇をやりたいけれど住む場所に困っている人を支援し、これを劇団の強みにしたいと思っています。


カフェ・バー運営のアイデア

稽古場や公演スペースとは別に、劇団が運営するカフェやバーを設けるアイデアも出ています。打ち上げやアーティストのライブ会場としても活用できる場所になれば、劇団の活動をより多角化できそうです。


演劇理論に基づいた訓練

「1000時間ルール」の実践

何事も一流になるためには最低1000時間の練習が必要で、超一流になるには1万時間が必要という「1000時間ルール」を演劇にも適用しています。


私たちの年間稽古時間は約1050時間。毎日稽古に来れば1年でこの「1000時間」を超えることができます。才能があるかどうかよりも、継続的な努力が技術習得には不可欠だと考えています。


稽古時間を3時間に固定しているのは、それ以上だと集中力や体力が持続せず、毎日続けることが難しくなるからです。「毎日コツコツと努力を続ける」ことを大切にしています。


別役実の不条理演劇を深く学ぶ

日本の現代演劇に大きな影響を与えた劇作家・別役実の不条理演劇を深く掘り下げています。


不条理演劇では、沈黙不在関係性という概念が重要です。言葉が沈黙を内包し、沈黙を際立たせるために発せられる。神の不在の時代における人々の不確かな存在を描く。俳優同士の間に生まれる緊張やかすかな空気の震えそのものがドラマになる。


俳優には、自分の感情や解釈を役に投影するのではなく、共演者や舞台空間との関係性の中で「存在する」ことが求められます。相手のセリフを「聞く姿勢」が重要で、言葉は意味を伝えるのではなく、音符のようにリズムや響きを正確に再現することが大切です。


様々な演劇理論を学んでいますが、「感情を直接表現しない」という原則が、全ての演劇理論に共通する大きな要素だと感じています。


残酷演劇の概念も取り入れる

アントナン・アルトーの残酷演劇の概念も取り上げています。これは「自分自身に対する妥協のない誠実さ」であり、既存の枠組みを破壊する勇気、痛みを通して真の自由を得ることを意味します。観客を「感染」させ、変容させることを目指しています。


実践的な演技練習

複数タスクの同時処理

「アルト」と題された台本を用いた演技練習では、セリフの前に「何歩歩くか」、セリフの途中で「何秒止まるか」、止まった後に「体の向きを変える方向」、「深呼吸するかどうか」「全員を見るか見ないか」「握手をするかしないか」など、複数のタスクを段階的に追加していきます。


タスクを一つずつ丁寧に処理することが求められる練習です。


リアクションのサブテキスト化

特に重要な課題として、「リアクションのサブテキスト化」があります。役者がセリフ以外の「なんで?」「嘘だろ?」といった反応を心の中で「サブテキスト」として持ちながら、それに対して身体的な動きやボディランゲージ、呼吸をつける練習を行います。


役者が舞台上でセリフを言っていない間も「常にタスクを処理し続ける」こと、「聞いている時も行動を続けられる」ことを目的としています。


最後に

私たちは、AIなどの最新技術を最大限に活用しながら、深い演劇理論に基づいた実践的なトレーニングを継続することで、劇団として成長し続けたいと思っています。


従来の演劇界の枠組みにとらわれず、テクノロジーを積極的に活用する一方で、演劇の本質を深く探求することも忘れません。この両立こそが、私たちの目指すところです。


まだまだ小さな劇団ですが、大きな夢を持って活動しています。応援していただければ嬉しいです。





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