「君って哲学的だね」
あれは高校時代の放課後、あらゆるものの影が延びては世界が朱色に染まっていく教室。
私が窓辺に立ちちょっと斜に構えた皮肉を言うと、夕闇に立つ彼は口元ににやりと笑みをたたえたようでした。そしてその時、私に上記の言葉を放ったのです。
しかし、
「ん?ちょっとまて、哲学的か?」私は疑問に思いました。
正直、あまり褒められた気はしません。というのも私の脳裏には哲学、もとい倫理の資料集の最初の方に載っている、あのひげもじゃの…そう、ソクラテスが浮かんできたからです。そしてそのソクラテスは私に語り掛けました。「それってあんまりほめてないよね」と。
ただ、今なら彼の真意がわかります。なにも友人はソクラテスのことを考えて「哲学」といったのではないことを。おそらく彼の使った「哲学」とは「ムーミン」におけるスナフキンをみる時のような、「一休さん」における一休さんを見るようなそんな感覚でその言葉を使ったんだと思います。物事をひねって見る態度や皮肉的、といった意味のことです。
またあるとき私の母はTVの歌謡ショーを見ながら、
「なんか哲学的な歌詞だね」
と言いました。
時はヒッピー文化も大いにすたれボブ・ディランも町中で聞かなくなった2000年代のことです。「哲学的...?」とさすがに疑問に思いました。
また加えて言うと私の母は決して学の高い方ではありません。
おそらく彼女はなんか高尚なにおいがするけどよくわからない(例えばアンディ・ウォーホルの作品のような)ものを指してとりあえずほめていたに違いありません。
このような例から見ても「哲学」という言葉はその意味が意外と多様に思えます。
そしてここに「哲学対話」という言葉があります。
残念なことにこの言葉もそうした誤解を受けているものの一つです。学問的、皮肉的、もしくはアンディ・ウォーホル的と理解されているのではないでしょうか。
実際、私も初めて聞いたときはひげのもじゃもじゃした人同士が語り合う会だと思っていました。しかし、結果から言うとそのどれもに当てはまりませんでした。
理解を深めていきましょう。
皆さんは2020年から学習指導要領の科目に「公共」が追加されたことをご存じでしょうか。そこでは従来通りの教師が主導して展開していく授業の方式とは違い、生徒自身が互いに、疑問に思ったことを提起し、それぞれのアイデアを出し合い、解決策を見つけていく。というスタイルの授業が試みられているといいます。
なぜこの話をしたかというと、私は検索エンジンに「哲学対話」と打ち込むことで、偶然にもこのことを見つけたからです。これは「哲学対話」とこの「公共」の授業スタイルが近しいものということを表しているということではないでしょうか。
さらに見ていくとその「公共」の授業の土台となる要素がいくつかあることに気づきました。それが下記です。
・自由に思ったことを話せる空間
・物事に対する問題提起
・自分の気づけなかったアイデアを聞く
そして気づきました。
「そうか、このみんなで話し合う姿勢が哲学対話と関連があるのか」と。
またみんなで話し合いながら何かを考えていくことがもし「哲学対話」と呼ぶのであれば、「哲学対話」とは今までとは違った「哲学」となるだろう、と。
ここで話は結論です。
実は今度私たちはそのように話し合える機会を設け、実際に行ってみることから始めようと思い立ちました。
その名も「ふへん読書会的哲学対話」。
題名に「哲学対話」と銘打ちましたが、内実は「疑問に思ったことを話し合う機会」と考えてください。参加するにあたって必要なものは何もありません。気軽に行おうと考えています。
肩肘を張らずにリラックスして、力みすぎず話し合う。もちろん利害関係も抜きです。
(ちなみにアルコールも抜きです。)
あなたもこうした「哲学」の場に参加してみませんか?
概要です↓
題名:「ふへん読書会的哲学対話」
内容:最近、疑問に思ったこと/思っていることを話し合う
問いの参考例:
・「なんでこのような商品が売れているのか」
(例えば中国では日本人女流作家の本が売れているといいますし、ちょっと前では日本では「うっせぇわ」が大いに流行りましたね)
・「AIの時代、私たちに求められていく役割とは?」
(AIの発展は作家や翻訳家といった仕事を奪うとされています。また最近のアメリカではデトロイトやハリウッドで大規模なストライキがありましたね)
・「老いていくという意味」
(これはいささか普遍的な問いです。ブッダは老いている人を見て、悟りの世界に入っていったとされています。最近私は筋肉痛が遅れてやってくるようになりました・・。)
集合場所:11月5日(日) 13:00に神保町駅
時間:おおよそ90分~120分を見込んでます。
持ち物:特になし
参加費:無料
(喫茶店利用料はご用意願います)
オブザーバー参加OKです。参加希望者やご関心のある方はこちらにご返信ください。
ではご連絡お待ちしてます!