仏教アカデミー2022春
~時を越え《響く》メッセージ~
第3回
「春満開、美しさと儚さの交響曲」
「三大随筆」と言えば
『枕草子』『方丈記』『徒然草』と言われます。
順に成立したのは
平安中期、鎌倉初期、鎌倉後期です。
『枕草子』は、王朝風のすぐれて情緒的な作品で、「をかし」や「あはれ」の言葉が多用されています。
特に「をかし」がよく使われているため
「をかしの文学」と呼ばれます。
『方丈記』や『徒然草』は、それに対し
「無常観の文学」と言われます。
同じ随筆という形式ですが、時代の変革をそのまま反映し、その本質的な部分は『枕草子』と甚だしい隔たりがあります。
ここで注意すべきは「無常感」ではない、という点です。
「無常感」なら、感情になります。
「無常観」には、観察の“観”の字が使われます。
感情を入れず客観的に、ありのままを見ることを言います。
例えば、
『枕草子』では、四季折々の景観を愛でて、花鳥風月に心を寄せます。
春になると花見をして「綺麗だなぁ」と眺めるようなものです。私たちが生きる歓びを感じる瞬間です。
『方丈記』や『徒然草』は、私を取り巻く世界は絶えず変化するし、私自身が何よりも無常の存在だと説きます。
桜の花が咲く中に「命の儚さ」を詳しく見つめることに当たります。
(内容)
○四苦八苦とは
○仏教は「抜苦与楽」の教え