主人公の少年アンディは、両親、姉と共に四人で暮らしている。子供同士の無邪気な遊び、町にサーカス団が来て去っていく話、アンディの淡い恋模様など、日常の些細なできごとが詩情豊かに綴られていく。
著者のダニロ・キシュは、ユダヤ人を父に、モンテネグロ人を母にもつ、ユーゴスラビアの作家です。1935年に生まれた彼は、少年時代に第二次世界大戦を経験します。ナチスによる迫害で生活は蹂躙され、父親はアウシュビッツ収容所に送られます。そうした激動の時代を、私小説として連作短編形式で綴ったのが本作です。日常がポエティックかつユーモラスに描かれながら、実は奥底に根強い戦争への嫌悪感が漂っています。最後に置かれた「少年と犬」という一編では、不幸の象徴とも言うべき、犬との悲しい別れが描かれ、涙せずにはいられません。